硬膜外麻酔による無痛分娩の副作用
硬膜外麻酔による無痛分娩の安全性は確立されていますが、副作用がないわけではありません。
以下に、起こりうる副作用の説明をします。
●かゆみ…特に麻薬性鎮痛薬を脊髄くも膜下腔に用いた無痛分娩の場合に頻度の高い副作用です。
かゆくなる部位は薬の種類によって多少異なりますが、かゆみは数十分から1時間位で消失することが多く、治療のための薬を必要としない程度です。
もちろん必要があれば、かゆみ止めの薬もあります。
●低血圧…硬膜外麻酔開始後に血圧低下が起きることがあります。
その場合、横向きに寝るといった対応をとったり(子宮が血管を圧迫するのを避けるため)、昇圧剤を使用することもあります。
●発熱…硬膜外麻酔法が長時間にわたると、産婦さんに38℃以上の高熱が出ることがあります。
しかし熱そのものによって赤ちゃんに異常が起きることはまれです。
●尿閉…尿が膀胱にたまり、尿意はあるのに出ないことがあります。
分娩が終了すれば、徐々に治まります。
●吐き気…鎮痛法を開始して早い時期は血圧が変動しやすく、この時期に血圧が低下した場合は吐き気が起こりやすいと言えます。
しかし、麻酔を使わない出産でもよく見られる症状です。
分娩が終了すれば、長くは続かないので、その後の育児に影響が及ぶ心配もないでしょう。
●アレルギー…麻酔薬が誤って血管内に注入されたり、量が多量になった時などに、耳鳴り、めまい、舌のしびれなどが起きます。
この場合、適切な処置がされれば命に別状はありません。
また、重度のアレルギー反応であるアナフィラキシー反応と呼ばれる異常反応がまれに見られます。
かゆみを伴った赤い斑点が皮膚に生じ、嘔吐、むくみなどを起こし、重症な場合は血圧低下や呼吸困難が生じる可能性もあり、早急な処置が必要です。
硬膜外麻酔による合併症
麻酔薬を用いた無痛分娩といえば、硬膜外麻酔法が主流です。
これは、腰椎の中にある硬膜外腔というスペースに細い管を入れ、麻酔薬を注入する方法です。
この方法を行なうにあたって重大な問題が生じることは稀です。しかし針を進める際に誤って硬膜外腔の奥にある袋を傷つけてしまった場合、偶発的硬膜穿刺といって、いくつかの影響が出ることもあります。
もしそれに気付かず麻酔薬が投与された場合、脊髄全体にまで麻酔の効果が及び、呼吸が苦しく感じることがあります。
また、麻酔薬が血管内に入ってしまった場合、めまいや耳鳴りを起こすか、さらに希ですが重症の場合には、呼吸循環不全を起こします。
このような合併症が出た場合、早急な処置が必要となりますが、適切な処置をすれば命に別状はなく、後遺症もほとんど残らないようです。
ほかには「脊髄くも膜下麻酔後頭痛」といわれるものがあります。
麻酔後、数時間して起き上がろうとすると、激しい頭痛があります。
特徴的なのは、安静に寝ている時はそれほどでもないのですが、急に体を起こすと頭痛がひどくなります。
それ以外に、体の姿勢とは関係なく起こる頭痛もあります。これは脊髄くも膜下麻酔後頭痛に比べ症状は軽い場合がほとんどです。
また、硬膜外麻酔による無痛分娩を行なわなくても、出産を終えて家に帰ってみると頭が痛いという人は同じくらいの確率でいます。
こうしてみると、頭痛に関しては、かならずしも硬膜外麻酔のせいばかりではないように思います。
硬膜外麻酔の副作用 吐き気
現在行なわれている無痛分娩は、多くが硬膜外麻酔法です。
「麻酔」は無痛分娩のような出産の場面に限らず、その他の手術や歯の治療などにも使用されます。
麻酔を受けた人で、その後に吐き気をもよおした経験のある人もいるでしょう。
麻酔薬と吐き気はどのように関係するのでしょうか。
無痛分娩に用いる硬膜外麻酔法では、麻酔法を開始して30分以内の早い時期は血圧が変動しやすく、この時期に血圧が低下すると吐き気が起こりやすくなります。
このとき、首の後ろにある脳の一部分の酸素濃度が低下すると、吐き気の症状が表れます。
逆に言うと、多少血圧が下がっても、酸素が上手に脳まで届いている場合は、吐き気が起こることは少ないのです。
しかし単純に、薬の量が少ないほど吐き気の症状が少ないというわけではありません。
薬による鎮痛効果が十分でないときに子宮収縮がおきると、それが誘発となって吐き気を引き起こしたり、分娩にネガティブなイメージを持っていて不安が強い産婦さんでは、分娩すること自体が原因となって吐き気をもよおすことがあります。
また、分娩中の水分摂取が足りない場合や低血糖状態も吐き気を催します。
子宮の下部が伸ばされると反射によって嘔吐が起こりやすくなります。
このように自然分娩の場合でも、陣痛のために時々吐き気が起こることがあります。
つまり、分娩時の吐き気は麻酔薬の副作用によるものなのか、それ以外なのかは識別するのが難しいようです。
仮に麻酔薬が原因の場合も、一度吐いてしまうと楽になります。
そして分娩後それほど長く続きませんので、その後の育児に影響が及ぶ心配もないでしょう。